
ルールナンバーワン投資法の続きです。
前回までで、ようやく株式投資銘柄を選ぶ際の基準にする5つの指標およびその計算方法の説明が完了しました。
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株式投資銘柄を選ぶ際の基準にする5つの指標
前回までのおさらいとして、5つの指標とは以下のものを示しています。
そして指標の右に記してあるのは、僕が全資産の大半を投資している某医療系銘柄の過去10年間の数値です。
- ROIC:23%
- BPS(一株当たり純資産伸び率):26%
- EPS伸び率:26%
- 売上高伸び率:29%
- フリーキャッシュフロー伸び率:29%
上記5つの指標の数値のすべてが10%を上回っている場合、その企業の株は「買い」であることを意味しています。
僕のこれまでの記事を読んで実際に指標の計算をされた方ならすぐにわかると思いますが、これら5つのすべてで10%を超えている企業は、そう簡単には見つかりません。
でも必ず存在していますので、気長に探しましょう。
企業の定価を計算する
もしすべての条件を見たいしている「買い」の企業が見つかったら、次に知りたいのは、「いくらで買うか」です。
そして、いくらで買うかを考える前に、その企業の本来価値(本質価値、または公正価格、小売値)を算出する必要があります。
つまり、自分が買おうとしている企業の株式の妥当な価値のことです。
「直近の株価」=「本来価値」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
株式への投資は、株を紙切れとしてではなく、企業として買うという視点で考えることが大切です。
定価を算出するのに必要な4つの数字
定価を出すには、以下の4つの数字が必要となります。
- 現在のEPS(一株当たり利益)
- 予想EPS伸び率
- 予想PER(株価収益率)
- ルールナンバーワンが求める最低収益率(15%)
なぜこれらの4つが必要かというと、定価を出すには企業が将来つくる収益を知る必要があるからです。
オーナーに報告される企業収益を最も正確に示しているのが、EPS(一株当たり利益)です。そのため、将来のEPS、10年後の予想EPSが必要になります。
現在のEPSと予想EPS伸び率を複利計算していくと、10年後の予想EPSを算出することができます。
そして予想EPSが分かれば、10年後の株価もわかるというわけです。
市場は、「一株当たり利益の何倍」という形で企業の株価を付けるからです。
これが予想PER(株価収益率)です。10年後の予想EPS伸び率に予想PERを掛け算すれば、10年後の株価を算出することができます。
そして10年後の株価が分かれば、今日いくらで買うべきかもわかるというのがルールナンバーワンの考え方です。
ルールナンバーワン投資家にとっては、年15%以上の複利収益率があればいいので、その収益率と将来の株価から、定価の計算ができるのです。
定価の計算方法
以上をまとめると、株価の定価の計算方法は、以下のようになります。
- 現在のEPAと予想EPS伸び率の複利計算した数字=10年後の予想EPS
- 10年後の予想EPS×予想PER=10年後の株価
- 10年後の株価×ルールナンバーワンが求める最低収益率(15%)=定価
現在のEPS
現在のEPSは、たいていの金融関連ウェブサイトに出ています。ヤフーファイナンスからアクセスしてもよいし、その企業のIRページから決算単身などをダウンロードして確認することもできます。
直近の通年のEPSを見つけましょう。
予想EPS伸び率
予想EPS伸び率は、過去10年間の平均EPS伸び率を用います。
僕が投資している過去10年間のEPS伸び率は、上記の通り、26%です。
予想PER
上記までのステップで10年先のEPSを出したら、今度は株価がEPSの何倍になるかをチェックします。
PERさえわかれば、1株当たりの株価を出すことができます。
例えば10年後に、EPSが1ドルになったとします。しかし株価がEPSと同額(PER1倍)になることはまずありません。一株当たり利益が1ドルなら、その株を持っている人は、株を5ドル、あるいは10ドルで売りたいと考えるのが普通です。
つまり5倍から10倍のPERということになります。
ヤフーファイナンスやiPhoneの株価アプリを見たことがある方ならご存知の通り、市場は、その企業が今後ぐんぐん伸びると思うと、50倍や100倍のPERをつけることがあります。
これは株式市場全体がリスクオンの時も同様です。また、成長しているIT業界の株などは概して高いPERを示すでしょう。(例えば僕が投資している企業の株式も、最近80を超えるPERをつけていました)
逆に、あまり伸びそうにないと思うと、PERは5倍くらいに収まることもあります。
そう、PERは市況によって変わるのです。
市場はブル、ベアのようにトレンドがあるので、PERは異常に高くなったり、低くなったりします。
私たちはそのセンチメントを利用して企業を売ったり買ったりするわけですが、企業の定価を決めるときには、適切なPERを使わなくてはなりません。
簡単にPERを出すためには、予想EPS伸び率を2倍にするという方法があります。
僕が投資している企業でいうと、その企業が今後10年で毎年収益を26%で伸ばすと思ったら、予想PERは52倍になります。
便宜的に、上記をデフォルトPERと呼びます。ほかに使える材料がないときは、このデフォルトPERを使うことになりますが、たいていは実績PERが載っています。
よって、デフォルトPERと実績PERのうちの、どちらか低い方を予想PERとして使いましょう。
低い数字を使うことで、保守的な株価を出すことができるからです。
ルールナンバーワンが求める最低収益率
ルールナンバーワン投資家の最低収益率は年15%です。
ルールナンバーワン投資家は、定価以下しか払わないし、今後10年、年15%以上のリターンをもたらすものしか買いません。
もちろん、完璧に予想通りに進むことはほとんどないので、私たちは定価よりもずっと安い値段、つまり大きな安全域を守らなければなりません。
15%という目安は適当に決めたものではなく、常識で考えられるインフレ率や、株価を売却したときに得られる利益にかかる税金、自分のお金を他者に託すリスクの見返りとして十分な収益率が15%なのです。
それに、あまりにも高い収益率を最低目標にしてしまうと、それを満たしてくれる企業を見つけるのはとても困難になります。
いずれにしても、15%はかなり高い収益率なので、もし長期に渡ってこの収益率を実現できれば、私たちは必ず大金持ちになれるでしょう。
将来の株価から定価を算出する
これまでの手順で10年後の予想EPSが分かったら、10年後の株価を算出することができます。
将来の株価の計算
これにはPERを使います。上述の通り、10年後の予想EPSに、予想PERをかけるのです。
僕が投資している企業のデフォルトPERは52倍で、実績PERの60倍よりも低いので、デフォルトPERを使います。
現在のEPSが30.2円、予想EPS伸び率が26%なので、10年後のEPSは複利計算で304円。
なお、複利計算については、以下のサイトで簡単に算出することができます。
おそらく理系の方ならそのようなサイトは必要ないと思いますが、算数が苦手な僕は最大限に活用しています。
- Interest Rate Per Time Periodに予想EPS伸び率
- Number of Time Periodsに10年の「10」
- Present Valueに現在のEPSを入力
- 「Calculate」をクリック
304円にデフォルトPERの52倍をかけて、10年後の株価は15,838円となります。
現在の定価の計算
そして将来の株価から定価を算出するときは、「72の法則」を使うことができます。
ルールナンバーワン投資家が求める収益率は最低15%だから、72の法則を使うと、「72÷15=約5」。
つまり、約5年で2倍になります。つまり収益率が15%だと、投資家は10年の間に2回、お金を2倍に出来ることになります。
1ドルの2倍は2ドル。2ドルの2倍は4ドル(1ドルは4ドルの4分の1)。
だから私たちが将来の株価を計算できれば、4で割ることで定価が算出できます。
先ほど計算した、10年後の株価が15,838円の某株式の現在の定価は、4で割ると、3959円という計算になりました。
買いたい企業を見つけよう
現在の実際の株価はそれよりも高いため、計算通りに行くとこの株式は今でも「買い」ということになります。
というわけで、僕は現在、この株式を多めに買って、キープしています。
この決定が吉と出るか凶と出るかはまだ分かりませんが、今後、身をもって体験していきたいと思います。